保険医療機関・保険医について

こんにちは,名古屋の弁護士の井川です。

今回のブログでは,皆さん当たり前のように利用しているため,意外と詳しくは知らない病院や医師についてお話します。

まず,皆さんが健康保険を使用して病院や診療所で治療などを受ける場合,基本的には健康保険法等の規定で規定されている療養の給付を行う病院・診療所で治療を受けており,これらの病院・診療所は保険医療機関と呼ばれています。

日本に存在する全ての病院・診療所が保険医療機関というわけではありません。

保険医療機関の指定は,病院・診療所の開設者が,自由意思に基づいて申請することにより,厚生労働大臣が行うと健康保険法第65条に定められています。

また,そのような保険医療機関である病院・診療所における診察や治療は,保険医として登録されている医師が行っています。

医師は,医師国家試験に合格し,医師免許を受けることにより自動的に保険医として登録されるわけではなく,保険診療を担当したいという医師の自らの意思により,勤務先の保険医療機関の所在地(勤務していない場合には住所地)を管轄する地方厚生(支)局長へ申請する必要があります。

保険医療機関である病院・診療所,保険医は,保険医療機関及び保健医療養担当規則という規則を遵守する必要があります。

この保険医療機関及び保険医療養担当規則とは,健康保険法等において保険診療を行ううえで保険医療機関と保険医が遵守すべき事項として定められた厚生労働省令であり,療養担当規則や療担とも呼ばれています。

厚生労働省保険局医療課医療指導監査室が平成30年に出している「保険診療の理解のために」の中では,保険診療として診療報酬が支払われるための条件の一つとして療養担当規則の規定を遵守することが定められており,保険医療機関,保険医にとって遵守すべき重要な規則となっています。

この療養担当規則の一部を紹介します。

療養担当規則第2条の4の2では,保険医療機関が患者に対して一部負担金の額に応じて収益業務に係る物品の対価の額を値引きする行為や事業者又はその従業員に対して,患者を紹介する対価として金品を提供する行為等を禁止しています。

すなわち,健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益の提供により自己の保険医療機関で診療を受けるよう誘引してはならないのです。

紹介の対価を支払うことなどは一般企業では日常的に行われているものともいえますが,保険事業の健全な運営を保つため,保険医療機関等がこれらの誘引行為を行うことは禁止されているのです。

療養担当規則については,今後のブログでも紹介をしていこうと思います。

本日のブログは以上となります。