医師法17条①

平成30年11月14日に,医師法17条の医業の解釈についての高等裁判所の判断がでました。
今回はこの判決について3回にわけてご紹介します。
この裁判は,被告人が,医師でないのに,業としてタトゥーショップにおいて針を取り付けた施術用具を用いて皮膚に色素を注入する医行為を行い,もって医業をなしたものとして,医師法17条違反の罪に問われたものです。
原審では,被告人の行為が医師法17条の医業に該当するとして,被告人は有罪とされていました。

原審の判断に対しては不当であると考える弁護士も複数いました。
そして,高等裁判所は,原審のこの判断を覆し,被告人を無罪としたのです。
以下,高等裁判所の判断を抜粋します。
まず,高等裁判所は,原審の判断の概要として以下のとおり述べます。
原判決は,本件の争点を,〔1〕針を取り付けた施術用具を用いて人の皮膚に色素を注入する行為(以下「本件行為」という。)が医師法17条の「医業」の内容となる医行為に当たるか否か,〔2〕医師法17条が憲法に違反するか否か,〔3〕本件行為に実質的違法性があるか否か,であるとして,後記のとおり,〔1〕については,本件行為は医師法17条にいう「医業」の内容となる医行為に該当する,〔2〕医師法17条は憲法31条に違反するものではなく,また,本件行為に医師法17条を適用することは憲法22条1項,21条1項,13条のいずれにも違反しない,〔3〕本件行為には実質的違法性が認められるとの判断を示し,本件公訴事実どおりに罪となるべき事実を認定した上,本件行為に医師法31条1項1号,17条を適用して被告人を罰金15万円に処したものである。
(1)本件行為の医行為該当性に関する原判決の判断要旨
ア 原判決は,「医行為」の意義について,医師法17条は,医師の資格のない者が業として医行為を行うこと(医業)を禁止しているところ,これは,無資格者に医業を自由に行わせると保健衛生上の危害を生ずるおそれがあることから,これを禁止し,医学的な知識及び技能を習得して医師免許を得た者に医業を独占させることを通じて,国民の保健衛生上の危害を防止することを目的とした規定であるとし,同条の「医業」の内容である医行為とは,医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為をいうと解すべきである,と説示する。
イ そして,原判決は,医師法17条及び同法1条の趣旨や法体系から,「医行為」とは,〔1〕医療及び保健指導に属する行為の中で(医療関連性),〔2〕医師が行うのでなければ保健衛生上の危害を生ずるおそれのある行為をいうと解すべきであるという弁護人の主張に対し,その主張によれば,医療及び保健指導に属する行為ではないが,医師が行うのでなければ保健衛生上の危害を生ずるおそれのある行為(美容整形外科手術等)を医師以外の者が行うことが可能となり,このような解釈が医師法17条の趣旨に適うものとは考えられないし,弁護人の主張は,法体系についての独自の理解を前提とするものであるとして,弁護人の主張を排斥している。

続きは次回のブログでご紹介します。